ホーム > お・い・し・い・エッセイ 活弁エッセイ 山崎バニラ(2)「活動写真」の歴史、語ります。 No.183
「活動写真」弁士の山崎バニラです。 時は1891年、音に名高い発明王トーマス・エジソンが発明したのがキネトスコープであります。といっても、見ためはただのタンス。一人ずつ覗き込む方式で、人がくしゃみをする様子を映した『くしゃみの記録』など数秒の映像が流れていました。 |
さて、この『くしゃみの記録』や『列車の到着』は記録映像。発明家自身が撮影した、いわゆるドキュメンタリー映像でした。しかし、1902年封切りの『月世界旅行』は違いました。監督、主演、美術と、すべてを担当したのはフランスの奇術師、ジョルジュ・メリエス。映像を使ってマジックをしようと試みて、特撮を取り入れたのが画期的でした。 |
ところで、無声映画は今でも新作が作られています。アカデミー賞5部門受賞で注目を集めた『アーティスト』(2011/フランス)が記憶に新しいですね。また、ちょうど今全国で順次公開されている『ブランカニエベス』(2012/スペイン、フランス)もとてもオススメです。タイトルはスペイン語で、「白雪姫」の意味。闘牛士の父とフラメンコダンサーの母との間に生まれた少女が「こびと闘牛士団」に拾われ、見せ物巡業の旅に出るという波瀾万丈の物語。無声映画ですので人の音声はないのですが、映像と音楽、魅力的なヒロインと物語の力で一瞬たりとも飽きさせません。 でも、無声映画の醍醐味はやはり活弁付き上映で見ることだと、私は思っています。ホームシアターの普及や娯楽の多様化で映画館離れが心配される昨今ではありますが、だからこそ映画館でしか味わえない弁士や生演奏付きの映画鑑賞には新鮮な魅力と可能性があるんじゃないかと。 |
活弁士(活動写真弁士)。1978年、宮城県白石市生まれ。東京育ち。清泉女子大学文学部スペイン語スペイン文学科卒業。「ヘリウムボイス」と呼ぶ独特の声と、大正琴やピアノを弾き語る独自の芸風を確立し、全国で活弁ライブを開催。声優としてもアニメ『ドラえもん』ジャイ子役や、子供向けお笑い番組『ワラッチャオ!』(NHK-BSプレミアム)キャサリン役など出演作多数。NHK-BS1『サッカープラネット』にプレゼンターとして出演中。著書に『活弁士、山崎バニラ』(エイ出版)。新しい趣味はフラメンコ。上級クラスにいる母に習いながら、ダンスのレッスンに通っています。