銘菓の装い

ホーム > 銘菓の装い No.125 十勝日誌

十勝日誌

お菓子の玉手箱

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 「十勝日誌」というぶ厚い本を目の前にどんと置かれて、まさかその中に十数種類ものお菓子がぎっしり詰まっているとは、誰も思わない。表紙をめくり、第1ページ目を開いて、アッと驚く。
中に詰まっているのはお菓子だが、北海道の歴史であり、物語でもある。たとえば、鍋の形を模した最中「ひとつ鍋」は、帯広開拓の恩人依田勉三翁の句「開墾のはじめは豚とひとつ鍋」にちなむ菓子。石川啄木の「しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな」から名づけた「冬の月」しかり。
包装で目をひくのは、かますに入れてぐっと縄をかけた甘納豆「らんらん納豆」、開拓時代から製造されたバター「マルセイバタ」のラベルを模したレトロ調の「マルセイバターサンド」。ふきのとうの絵のホワイトチョコレートも、もちろん入っている。
「十勝日誌」は、お菓子を詰め合わせて、六花亭の商品の実物カタログにもなっている。 空き箱が捨てがたく、文庫に使っているという話も聞いた。
ところで、「十勝日誌」とは何かといえば、松浦武四郎の著作名の一つである。松浦は江戸末期から明治にかけて北海道をくまなく探検調査。「北海道」をはじめ、「十勝」「石狩」など、北海道の地名のほとんどを名づけた人で、彼抜きで北海道の夜明けは語れない。
では、社名「六花亭」の由来は何かというと、雪の結晶を表す異称「六花」からとり、奈良東大寺の元管長・故清水公照師が名づけたという。
六花亭が建設した中札内美術村は、お菓子屋さんの夢が生んだ特異な北海道文化。柏林の中に、相原求一朗美術館、六花亭の包装紙にもなっている山野の草花を描いた画家、坂本直行記念館、レストランなどが点在し、美にふれるひとときへと人をいざなう。

 文/大森 周
写真/高木隆成

北海道 六花亭

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