Nipponの歳時記

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小豆はスーパーフード


小豆

 食品の機能性というと、健康に良い、ダイエットに効果的、病気を予防できるなどの健康効果を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。これらは食品の「三次機能」と呼ばれるもので、身体の調子を整える生体調節機能を指す。

 食品の「一次機能」とは、我々が生きるために必要な栄養を供給する栄養機能のことである。小豆には、成分の約6割を占める炭水化物のほかに、たんぱく質が2割ほど含まれている。これは大豆ほどではないにしても、牛肉や豚肉に匹敵する割合で、たんぱく質の供給源としても、小豆は優れものなのである。しかも脂質の量は2%と少なく、脂質摂取過多の現代の食生活にはバランスが良い。

 食品の「二次機能」は、味や香り、食感など、人間の五感に関係する嗜好・感覚機能である。小豆を使った和菓子や餡は、甘く独特な香りが私たちの食欲をそそる。長い歴史の中で培われてきた、和の嗜好品の代表格である。

 小豆はこれまで主に嗜好品用途として使われてきたため、一次機能や二次機能について語られることが多かったが、最近では「三次機能」が注目されている。特に、食物繊維による腸内環境の改善と、ポリフェノールによる抗酸化作用には目を見張るものがある。

 現代の日本人に最も不足している食品成分は食物繊維で、60年ほど前と比べると、1人あたりの1日の摂取量は約半分に減っている。しかし小豆にはごぼうの4倍もの食物繊維が含まれており、便秘の解消や腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善による免疫力のアップにもつながることが分かってきた。

 また、北海道産小豆のポリフェノール含量は一般的な赤ワインの2倍近くもあり、抗酸化作用によるアンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待されている。小豆はまさに、現代人に必要な成分が詰まったスーパーフードなのである。

 秋、北海道では小豆の収穫も終わりを迎え、やがてあたり一面が真っ白な雪野原へと変わっていく。これから迎える寒い季節には、温かいお汁粉やお赤飯で身体も心も温め、長く厳しい冬を乗り越えたい。

顕微鏡をのぞく人

illustration by 小幡彩貴

加藤 淳(かとう じゅん)

数多くの著書や各種メディアで「あずき博士」として知られる研究者。
北海道立総合研究機構(農業試験場)などを経て、現在は名寄市立大学副学長(栄養学科教授)。主な著書に『最強のあずき力』(KKロングセラーズ)、『あずき毒出しスープ』(河出書房新社)などがある。