小城羊羮の名は、小城町という町の名前から取られている。だが、小城羊羮のほうが、小城町そのものより、ずっと知られているのではないだろうか。
小城町は九州・佐賀県にあって、佐賀市に近く、市の中心部から北西十キロ余りのところにある。江戸時代は鍋島支藩の城下町、それ以前は関東の豪族千葉氏の支配した土地であった。千葉城の古跡が今に残っている。
このあたりは、唐津、伊万里、有田と、有名窯場のひしめく焼きもののメッカ。いきおい、小城町は観光スポットからはずれがちだが、祇園川沿いに歴史の面影を残す、魅力ある町である。
村岡総本舗の小城羊羮の包装をみると、そういう小城町の雰囲気をおのずから表しているようだ。
商品名その他の文字を囲んでいる桜の模様は、二重罫を使った古風なデザインと渋い小豆色の色調で、品格を作り出している。 これは、小城が桜の名所であることにちなむ意匠だという。 花どきには、小城公園に約三千本の桜が咲く。
この紙の包装の中に、竹の皮で包み、さらにその上から木材を紙のように薄く削った経木で、縦からも横からも巻いた羊羮が入っている。セロファンの閉じ口を開けて経木ごと羊羮を引き出すと、木の香、竹皮の香がふわりとほのかに匂うようだ。
羊羮は、透明感のある鮮やかな紅色。白小豆餡に加えた天然の紅の色合いである。
小城の羊羮は明治五年、森永惣吉が桜羊羮を売り出したのが最初といわれる。村岡総本舗の創業者村岡安吉が羊羮を作り始めたのが明治三十二年、販売先として鉄道や陸軍に着目して成功した。地名を生かして「小城羊羮」の名前を初めて用いたのもこの人である。
文/大森 周
写真/太田耕治
佐賀県小城郡小城町861
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