小布施町は、長野市から長野電鉄の特急で二十分のところにある。
この小布施町に「北斎館」が誕生した昭和五十一年、東京にもない葛飾北斎の美術館が、ずいぶんと田舎にできたものだと思った。ところが、新幹線ができて、東京から長野までわずか一時間半。小布施町も、決して遠いところではなくなってしまった。
北信濃一帯は、魅力のある地域である。その一つは、果実の豊富なこと。津軽に次ぐリンゴ、更埴市があんずの里なら、小布施は古い歴史をもつ栗の里である。江戸時代、小布施の栗は毎年、将軍家に献上されていた。
竹風堂の銘菓「栗かの子」は、風味抜群を誇る小布施の栗を用いて作られ、不足分も国内産の栗だけで補っている。蜜栗に栗の煉りあんを混ぜた、無添加、無着色の純粋に栗だけのお菓子だ。
容量250gの「栗かの子」は、いが栗の絵に東大寺の清水公照師の句を散らした渋いグリーンの包装紙できっちりと包装されている。それを開き、正方形の箱の赤い竹風堂マークの封を切ると、観音開きになっていて、中からいよいよ「栗かの子」のアイボリーの丸缶が現れる。
この容器、金属缶ドリンク類と同じ方式だが、ポリプロピレンなどの新素材を使っている。そのため、開缶の際に指をケガすることもなく、使用後は焼却もできるという竹風堂だけが用いているすぐれもの。
竹風堂は、創業明治二十六年の老舗。栗と美術館の町という小布施の特色を、そのまま経営に反映させてきた。小布施本店の中庭には、民俗資料館として日本有数の(財)「日本のあかり博物館」を持ち、松代店の隣地には「池田満寿夫美術館」を擁している。
文/大森 周
写真/太田耕治
長野県上高井郡小布施町973
TEL 026 ( 247 ) 2569