出張帰りのお父さん。
「いま、名古屋駅だけど、これから帰るよ」
これは、カエル・コール。
だが、待っている奥さんやお子さん、コールだけじゃつまらない。お土産もほしい。
そんな時にぴったりのお土産が、名古屋にある。青柳が売り出して評判の「カエルまんじゅう」だ。こんな宣伝文句で知られている。
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「努力の柳に とびつきカエル」は、平安時代の書の名人小野道風が、とび移れるまで何度でも柳にとびつくカエルを見て不屈の精神を学んだという有名な逸話。念のため。
その「カエルまんじゅう」、包装紙は青柳の色とカエルの色に通じる明るめのモスグリーンで、大小のカエルののんきな顔が散らしてある。これをはずすと、やはりグリーンの箱に、白抜きでカエルの顔が大きく一つ。箱の中のカエルたちは、素焼きの焼物を思わせる焼き色をしている。
箱の蓋の裏側には、「カエルまんじゅうの箱でお面をつくろう」とあり、作り方が出ている。つまり、箱に描かれているカエルが、お面になるのだ。サービス満点。
青柳総本家は、初代の後藤如休が明治初年に尾張藩主から「青柳」の屋号を賜ったという老舗のお菓子屋さん。戦後、名古屋在住の日本画の大家・杉本健吉氏が、青柳のマーク、柳にとびつくカエルをモチーフにデザインした。このカエルとの出会いを新しい感覚で生かそうとしたのが、この菓子。腸の働きをよくするオリゴ糖も入っている。
味は? おいしさの決め手は、ほのかな「こけもも」の酸味。あっという間に、箱からカエルがいなくなった。
文/大森 周
写真/太田耕治
名古屋市守山区瀬古1-919
TEL 052 (793) 0136