銘菓の装い

ホーム > 銘菓の装い No.137 流れ梅

流れ梅

雪国の涼感、香る

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 富士山に月見草ではないが、新潟には梅がよく似合う。酒飲みなら新潟とくれば梅の文字が入った某銘酒を思い出すが、甘党ならば、このお菓子を思い浮かべることになりそうである。大阪屋の夏のお菓子「流れ梅」。
 大阪屋は、近江出身の初代が大阪で修業し、安政5年(1858)、新潟に浪花堂大阪屋を開店創業した。
献上菓子に取り上げられるような高雅な和菓子をつくる一方で、すでに昭和初期から、パンの製造を開始。戦後もいち早く洋菓子を手がけ、和菓子と洋菓子の垣根をとりはずしてきたのが、なんといっても大阪屋という老舗の特色だろう。「 万代太鼓」はバームクーヘンにクリームを入れ、「ユーロパイ」は漉し餡をパイで包み、「明けの穂」には小倉餡にクリームを合わせて使うというふうに、この店の菓子は和と洋を融合させたものが多い。
 早くから洋に目をつけただけに経営も新しく、新潟一円に、フランチャイズ・システムによるチェーン展開をしている。現在の社長岡嘉雄さんは、50歳と若い。
 さて、「流れ梅」だが、まず包装紙を見て、なるほどと思った。和色のピンクに白抜きで雪椿があしらわれている。雪椿は新潟を中心に、日本海側の山野に自生し、豪雪地帯に可憐な花を咲かせる特色ある椿の種類だ。
 箱には、「碧き渓すゞ風流る」という色紙が刷り込まれた碧青の掛け紙。裏には「四季の新潟」という民謡のことなどが紹介されていて、この試みもおもしろい。
 宅配便だから、箱は発泡スチロール。中に透明の容器に入った「流れ梅」が6個並んでいる。ゆっくりと密閉用のフィルムをはがすと、はや梅の香りが漂う。
 くずきり風の身、果汁、青梅の実2つ。すべてが溶け合い、梅の香りと味が、涼感とともにのどを流れくだるようであった。

 文/大森 周
写真/太田耕治

大阪屋

新潟市大渕1631の8
TEL:0120 (211) 435
FAX:0120 (211) 437