銘菓の装い

ホーム > 銘菓の装い No.148 特製誉の陣太鼓

特製誉の陣太鼓

太鼓の中身は、やさしい味

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 銘菓「誉の陣太鼓」で知られる「お菓子の香梅」は、創業者の副島梅太郎さんが大正12年、弱冠12歳で台湾の一六軒に見習い奉公に出て、森平太郎氏に師事。昭和21年に熊本に引き揚げてきて創業した店である。先頃、梅太郎さんは相談役に退いたが、90歳を越えていよいよお元気だ。
 現在の当主は、息子さんの副島隆さん(昭和17年生まれ)。
「誉の陣太鼓」とは、熊本らしい勇壮な名前である。優雅なネーミングが多い和菓子のなかでは、珍しい。ちょうど今の季節なら、男の子の節句などに贈るのにぴったりのお菓子である。
「誉の陣太鼓」は従来、直径5.5?ほどの大きさだが、お菓子の香梅では、平成13年、直径4?ほどの小型にして、小箱に2個ずつ入れた「特製 誉の陣太鼓」を発売した。この小型の方を食べてみると、正直食べやすい。食べる側に配慮した革命的な工夫で、早晩、「誉の陣太鼓」の主流になるのではないだろうか。
 その「特製 誉の陣太鼓」10個入りを前に、まず包装紙に見とれた。江戸時代のお菓子屋さんの店先を本格的に描いた風俗画だが、看板を見ると、「御菓子司 香梅庵」となっている。これは、初代が、江戸時代にでも創業していたら、こうもあろうか、という思いで画家に描かせたのだ。
   中央に岡持ちを持って立つ羽織の人物が、梅太郎さんによく似ているというのも、おもしろい。この絵も、初代のお菓子にかけた心意気の一つであろう。
 包装を解くと濃い小豆色の箱が現れ、蓋を取ると10個整然と並んだ赤銅色の小箱が、ぱっと目に入る。横で開く小箱から転がり出る2個の太鼓形のお菓子の個包みは、見事な金色。食べるのがもったいなくなるような、重厚で美しい包装である。
「誉の陣太鼓」は、大納言小豆で求肥餅をくるんだお菓子だが、小豆は十勝で栽培させて厳選したものを使い、水も阿蘇の伏流水を用いているという。それだけに、求肥の味わいも、粒餡の口溶けもまことによく、気がついてみると、小箱3個をいつの間にか食べてしまっていた。
 陣太鼓と名前こそ勇壮だが、中身はやさしい洗練されたお菓子である。

 文/大森 周
写真/太田耕治

お菓子の香梅

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