仙台は、大震災からの復興途上の東北で、中心都市としての重みをいよいよ増してきている。まず大都市仙台が明るさと活気を取り戻すことが、被災地を勇気づけることになるに違いないからだ。
今回はその仙台から、伝統の菓子舗の、珠玉の銘菓をご紹介する。九重本舗玉澤が10月から翌年4月まで、冬季限定で販売する「霜ばしら」だ。
九重本舗玉澤は江戸初期の延宝3年(1675)創業という、老舗中の老舗。茶道の盛んな仙台藩に、近江から初代玉澤伝蔵が菓子職人として招かれたのが始まりであった。屋号の「玉澤」は初代の姓、「九重本舗」の方は、明治天皇の御意にかなったというこの店の代表銘菓「九重」を、そのまま用いたものである。「九重」、
「霜ばしら」ともに、九重本舗玉澤の銘菓は、卓抜な着想と、繊細をきわめた技術によって作られているのが特色だ。
その後、当主は近江氏を名乗り、現社長の近江嘉彦氏は13代目である。
「霜ばしら」の栞には、「霊峰・蔵王の嶺々が真白に冬の粧いを整え、麓にも霜ばしらが立ち始める頃、菓子職人の手作業による銘菓『霜ばしら』の製造がはじまります」とある。
「霜ばしら」は、日々の天候を見ながら水飴を高度な職人技で薄く薄く引き伸ばして作るお菓子で、まさにそうした北国の冬の訪れから生まれた、姿、味ともに一篇の詩のようなお菓子である。
包装紙は、ピンク系の地色に社名を赤で、家紋風のマークを白ヌキで等間隔に入れてある。マークは松葉丸のなかに王(玉)の字。包装紙を解くと、丸い缶が厚紙の四角の筒からのぞいている。
厚紙の筒と缶のデザインは同じ。真っ青な空に真っ白な雪が飛んでいるように見える模様が、爽やかである。青一色の缶の蓋と側面に、オレンジ色で縁取った半円形の白地を設け、商品名と社名が入れてある。青とオレンジの対照が効果的だ。
蓋を開けると、缶には真っ白ならくがん粉が満たしてあり、らくがん粉を少し除けると「霜ばしら」が頭を出す。繊細な菓子がこわれないよう、らくがん粉で守っているのだ。
2cm×3cm大の一片は、白く、薄く、透明で、霜柱そのもの。口に入れると、上品な甘さを残して、すっと溶けてしまうのに驚かされる。
文/大森 周
写真/渡部 健五
仙台市太白区郡山4丁目2-1
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