明治40年(1907)、歌舞伎座や新橋の花街で賑わう木挽町の一角に、清月堂本店が創業した。目も口も肥えた上客に鍛えられながら四季折々に季節の和菓子を創っていたが、昭和になって「おとし文」という銘菓が生まれた。
玉子餡を漉し餡で包み、蒸気でふわっと蒸し上げた菓子で、ほろほろとしたはかない口溶けが特徴。少々小ぶりのサイズも、風趣に富む菓銘も品が良い。
だが、この菓子の真骨頂は、一見繊細に見えて、黒文字楊枝を入れてもばらばらに崩れない絶妙の湿りにある。美しく、おいしく、食べやすい。さりげなく気が利いていること、それこそが銀座のもてなしだ。
ここに紹介する「壹」は、「おとし文」を一まわり大きくして、個包装にした新製品。銀座発祥で最古の菓子舗から、小粋な手土産がまた一つ誕生した。
東京都中央区銀座7-16-15
TEL 03(3541)5588
今年で創業108年。新橋演舞場のすぐ近くにある本店は、1階に店舗、2階にはゆっくりお茶とお菓子が楽しめる
「清月茶房」がある。