この菓子が届いて、歓声をあげない人はいないだろう。香りも清々しい赤杉の木箱が真っ白な紙で包まれ、その上に端正な絵と達者な墨文字が躍る掛け紙、熨斗がつけられた「福ハ内」の菓銘、そして、きりりと結び上げられた紅白の水引――。“包む文化”の美しさに、まず日本人の心が揺さぶられる。
さらに、悦びは続く。菓銘の焼印が押された蓋を取ると、枡の中から大多福豆の形をした菓子が笑いかけてくるのだ。「ますますお元気で」「ますますのご繁盛を」。楽しいシャレに託して、贈り主の心が真っすぐ伝わってくる。
「福ハ内」は、鶴屋吉信の4代目が19歳の時に町で見た、節分の豆まきをする少女の愛らしさを表現して創った菓子だという。玉子の黄身をたっぷり使った生地で白餡を包んだ、ほっこり優しい姿と味。笑う門に、福が来る。
京都市上京区今出川通堀川西入
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享和3年(1803)の創業。家訓の一条にある「ヨキモノヲツクル為ニ材料、手間、ヒマヲ惜シマヌ事」を旨に二百年余、京菓子を作り続けている。代表銘菓に「京観世」「柚餅」など。