銘菓の装い

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ぬれ甘なつと

「甘」色の宝石

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 関西出張に持っていくと、口の肥えた女子社員が満面の笑顔で迎えてくれると噂に聞いた。その東京土産こそが花園万頭の「ぬれ甘なつと」。一般的な甘納豆と違い、小豆が煮崩れておらず芯まで柔らかで、表面はみずみずしい艶を帯びている。
 ぬれ甘なつとが生まれたのは、戦後の食糧難が続いていた昭和24年。砂糖についていえば、家庭向けにやっと配給が始まり、業務用も少量の割当が開始された頃のこと。戦争で店も工場も失った花園万頭の3代目が、ようやく手に入れた小豆と砂糖を惜し気もなく使い、試作を繰り返しながら創り上げたのが、この露に濡れた宝石のような菓子だった。
 歴史を知れば、味わいはさらに増す。小豆のおいしさが口の中で広がる幸福感に、ひととき日常が遠のく。

花園万頭

東京都新宿区新宿5-16-15
TEL 03(3352)4651 http://www.tokyo-hanaman.co.jp/


天保5年(1834)、金沢に創業。東京に出た3代目が昭和初期に「花園万頭」を売り出して人気となり、今日の礎を築いた。安心・安全をベースに、ほっとする手造りの味を守り続けている。