なんの飾りもない丸い菓子。しかし、一口噛むとザクザクでもカリカリでもなく、もちろんフワフワでもない独特の食感に驚かされる。江戸時代に南蛮船が伝えたポルトガル生まれの堅い焼き菓子は、明治の初めにこの店の8代目と9代目によって食べやすくおいしく改良され、今や佐賀を代表する銘菓となっている。「丸芳露」、なんと優しく美しい菓銘だろう。
主な材料は、選び抜いた数種の小麦粉と卵と砂糖。配合の調整を日ごとに行い、合わせた生地を冷蔵庫で寝かせたら、平らに伸ばし、胡麻油を塗り、真鍮の型で抜いて窯の中へ。250度で5分間、ここまですべてが人の手になる。だから、一つひとつの菓子に表情がある。
品質本位の経営方針とあいまって受け継がれてきた、滋味深く素朴で自然な味。丸い焼き菓子に、本格的な製品を作ることを誇りとしてきた店の150年分の自信が溢れている。
佐賀県佐賀市白山2‐2‐5
TEL 0952(26)4161