2014年の初夏、東北を代表する名菓、薄皮饅頭で知られる柏屋に新たな菓子が誕生した。その3年前に起きた東日本大震災の影響で休店していた本店の再開を記念して発売された「創菓 嘉永餅」だ。
包装をほどくと、ふわりとバターの香り。一口食べれば、もっちりと弾力のある生地にも驚かされる。そして、ほどよい甘さの餡に混ぜ込まれた松の実が舌の上で踊る。
五感を楽しませてくれる味わいは、160余年の歴史が磨いた職人技によるもの。街道の茶店時代の風情を写したような素朴な姿形もよい。
菓銘の「創菓」の二文字は、菓子で人々の心をなごませ、滋養を満たしたいと嘉永5年(1852)に菓子作りを始めた初代の心を受け継ぐという清々しい覚悟の言葉。
「この街に柏屋があってよかったと言ってもらえるような菓子屋になりたい」と、5代目当主。
こんな菓子屋がある街は、幸せだ。
住所 福島県郡山市富久山町久保田字宮田127-5
TEL 024(956)5511
https://www.usukawa.co.jp/