南半球の国々は、菓子の世界では話題となることの少ない地域です。砂糖産出国であるオーストラリアやブラジル等の菓子の歴史があまり知られておらず、郵便切手にも紹介されていないことが登場の機会を少なくしているようです。
近年は南アメリカ大陸の国々から意外な菓子が紹介されて、地域に根ざした菓子の状況が少しずつ明らかになってきています。
南アメリカのパラグアイでは、2003年に3種の菓子切手が発行されました。描かれているのはピーナッツ、トウモロコシ、チーズを原料とした鮮やかな彩りの菓子で、それぞれに素材が生かされています。
ペルーの菓子切手も3種。菓子は「リマ娘のため息」「ピカロネス」「マサモラ・モラダ」と独特の名称があり、わが国の伝統菓子の名称の発想に似た、いわゆる「銘菓」の趣きが感じられます。
大航海時代、南アメリカ大陸はスペイン・ポルトガルの支配を受け、それぞれの食文化が残されました。
ブラジルではマーマレードの語源である果実、マルメロの煉り菓子「マルメラーダ」がポルトガルより伝来し、伝統菓子として残されました。
ポルトガル語の「マルメラーダの入った箱」すなわち「カイシャドマルメラーダ」を「加勢以多」と解釈した江戸時代の日本では、「加勢以多」が各地で作られ、熊本には「加勢以多」すなわち「マルメラーダ」が現在も伝えられています。
地球の反対側にあるブラジルと日本には、今もなお大航海時代の伝統菓子が脈々と生き続けているのです。
村岡安廣